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横浜地方裁判所 昭和61年(わ)2366号 判決 1987年5月07日

本店所在地

神奈川県小田原市南町三丁目一番四八号

株式会社セントラル商事

(右代表者代表取締役 田中八郎)

本店所在地

東京都中央区日本橋箱崎町三七番四-四〇七号

有限会社カルディナー

(右代表者取締役 田中八郎)

本籍

東京都品川区小山四丁目二一番地

住居

神奈川県小田原市南町三丁目一三番二号

会社役員

田中八郎

昭和一四年三月九日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官中嶋三雄出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告会社株式会社セントラル商事を罰金五〇〇〇万円に、被告会社有限会社カルディナーを罰金八〇〇万円に、被告人田中八郎を懲役二年に各処する。

被告人田中八郎に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社株式会社セントラル商事は、神奈川県小田原市南町三丁目一番四八号に本店を置きメガネ及びコンタクトレンズの卸売業等を営むもの、被告会社有限会社カルディナー(昭和六〇年一月一〇日有限会社萩商事から商号変更)は、東京都中央区日本橋箱崎町三七番四-四〇七号(昭和六〇年一月一六日東京都目黒区自由が丘一丁目一四番四号戸田ビル五〇二号から本店移転)に本店を置きメガネフレーム及びレンズの卸売業等を営んでいるもの、被告人田中八郎は、右株式会社セントラル商事の代表取締役、右有限会社カルディナーの実質的経営者(昭和六二年二月二〇日以降は取締役)として右各会社の業務全般を統括するものであるが、被告人田中は各被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、仕入代金の水増し計上、架空仕入の計上、期末棚卸の一部除外(これについては被告会社株式会社セントラル商事のみ)等の方法により所得を秘匿したうえ

第一  (被告会社株式会社セントラル商事、被告人田中八郎関係)

一  昭和五八年五月一から同五九年四月三〇日までの事業年度における被告会社株式会社セントラル商事の実際の所得金額が四億七七八九万五三九四円あったにもかかわらず、同五九年六月三〇日、神奈川県小田原市荻窪四四〇番地所在の小田原税務署において、同税務署長に対し、所得金額一億六四六〇万一三七七円で、これに対する法人税額が六八六六万六四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額二億〇四三二万二七〇〇円は右申告税額との差額一億三五六五万六三〇〇円を免れた

二  昭和五九年五月一日から同六〇年四月三〇日までの事業年度における前記被告会社の実際の所得金額が四億六九四九万〇四八三円あったにもかかわらず、同六〇年七月一日、前記小田原税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一億九三三五万一七八六円で、これに対する法人税額が八〇〇五万六二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一億九九六一万一四〇〇円と右申告税額との差額一億一九五五万五二〇〇円を免れた

第二  (被告会社有限会社カルディナー、被告人田中八郎関係)

一  昭和五八年六月一から同五九年五月三一日までの事業年度における被告会社有限会社カルディナー(有限会社萩商事)の実際の所得金額が七九八四万七八九四円あったにもかかわらず、同五九年七月三一日、東京都目黒区中目黒五丁目二七番一六号所在の目黒税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一三四〇万八七八四円で、これに対する法人税額が四八二万一六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額三三五八万九七〇〇円と右申告税額との差額二八七六万八一〇〇円を免れた

二  昭和五九年六月一日から同六〇年五月三一日までの事業年度における被告会社有限会社カルディナーの実際の所得金額が二九〇八万二九三二円あったにもかかわらず、同六〇年七月三一日、東京都日本橋堀留町二丁目六番九号所在の日本橋税務署において、同税務署長に対し、所得金額が七三六万七四四二円で、これに対する法人税額が一九〇万八七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一〇四三万二五〇〇円と右申告税額との差額八五二万三八〇〇円を免れた

ものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  検察官他四名作成の合意書面

一  有本義郎の大蔵事務官に対する昭和六〇年七月二六日付、九月一三日付、昭和六一年三月七日付、三月一一日付(二)各供述調書

一  加倉田孝の大蔵事務官に対する各供述調書

一  紺野正晴の大蔵事務官に対する供述調書

一  辻井冏の大蔵事務官に対する供述調書

一  黒羽誠一の大蔵事務官に対する各供述調書

一  岩本安生の大蔵事務官に対する供述調書

一  新井尊史の大蔵事務官に対する供述調書

一  古宮仁の大蔵事務官に対する供述調書

一  都築義則の大蔵事務官に対する供述調書

一  被告人田中八郎の大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書

一  被告人田中八郎の当公判廷における供述

判示第一の一、二の事実につき

一  登記官作成の昭和六一年三月三日付登記簿謄本

一  大蔵事務官作成の昭和六一年三月二五日付「脱税額計算書説明資料」と題する書面(甲5)

一  小田原税務署長作成の昭和六〇年九月一九日付「国税の納付状況照会に対する回答」と題する書面

一  大蔵事務官作成の昭和六一年三月二五日付仕入高調査書(甲14)

一  大蔵事務官作成の昭和六一年三月二五日仕入値引戻り高調査書(甲16)

一  大蔵事務官作成の昭和六一年三月二五日付たな卸調査書

一  大蔵事務官作成の昭和六一年三月二五日付受取利息調査書

一  有本義郎の大蔵事務官に対する昭和六一年二月五日付、三月二四日付各供述調書

一  西田一成の大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書

一  佐々木利夫の大蔵事務官に対する供述調書

一  山下昇の大蔵事務官に対する供述調書

一  山田幸男の大蔵事務官に対する供述調書

一  長橋保昌の大蔵事務官に対する供述調書

一  青木玲二の大蔵事務官に対する供述調書

一  高橋裕美の大蔵事務官に対する供述調書

一  松下徹の大蔵事務官に対する供述調書

一  出井富夫の大蔵事務官に対する供述調書

一  唐沢直仁の大蔵事務官に対する供述調書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(昭和六二年押第八六号の1)

判示第一の一の事実につき

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同号の2)

判示第一の二の事実につき

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同号の3)

判示第二の一、二の事実につき

一  登記官作成の昭和六一年三月二〇日付、同月一九日付、昭和六二年三月二日付各登記簿謄本

一  大蔵事務官作成の昭和六一年三月二五日付「脱税額計算書説明資料」と題する書面(甲6)

一  日本橋税務署長作成の昭和六二年二月一七日付「法人税の納付状況照会に対する回答」と題する書面

一  大蔵事務官作成の昭和六一年三月二五日付仕入高調査書(甲15)

一  有本義郎の大蔵事務官に対する昭和六一年三月一一日付(一)供述調書

一  原義信の大蔵事務官に対する供述調書

一  原房子の大蔵事務官に対する供述調書

一  山本正の大蔵事務官に対する供述調書

一  山本知江美の大蔵事務官に対する供述調書

一  高井まゆみの大蔵事務官に対する供述調書

一  松倉一悦の大蔵事務官に対する供述調書

判示第二の一の事実につき

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同号の4)

判示第二の二の事実につき

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同号の5)

(量刑の理由)

被告人田中八郎は納税の義務、企業の社会的責任を忘れ、自らの経営する事業の発展のみに目を奪われ、事業の拡大資金等を蓄えるために、仕入代金の水増し計上、架空仕入れの計上、期末棚卸の一部除外等の方法により各被告会社の所得を偽わり、本件各ほ脱行為に及んだものであって、このような動機、手段方法さらにはほ脱税額が二社二年分で合計二億九〇〇〇万円余りの多額にのぼること、いわゆるほ脱率もけっして低くくないこと等からすると同被告人及び被告会社らの責任はきわめて重大であるといわざるえない。

しかしながら、被告人田中八郎及び被告会社関係者らは、税務当局により本件査察が開始された後は、反省の態度を示し、当局の調査に対して協力的であり、また、ほ脱税額が明らかになるや速やかに本税、重加算税、延滞税等の納付を済ませ、ふたたびこのような事態をひき起こさないように会社内の組織の改善、経理処理の改善、監査体制の改善、関連子会社の整理統合等の努力をしていることがうかがわれ、また、被告人田中八郎は前科、前歴がなく、有能な企業人であること等を総合して考慮すると、被告人田中八郎については執行猶予付きの懲役刑を、各被告会社については主文程度の罰金刑を各科するのが相当であると考える。

(法令の適用)

一  罰条 判示第一の一、二の各所為につき

被告人田中八郎につき法人税法一五九条一項

被告会社株式会社セントラル商事につき同法一五九条一項、二項、一六四条一項

判示第二の一、二の各所為につき

被告人田中八郎につき同法一五九条一項

被告会社有限会社カルディナーにつき同法一五九条一項、二項、一六四条一項

一  刑種の選択 被告人田中八郎の各罪につき懲役刑選択

一  併合罪の処理 被告人田中八郎につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第一の一の罪の刑に法定の加重をする。)

被告会社株式会社セントラル商事につき同法四五条前段、四八条二項

被告会社有限会社カルディナーにつき同法四五条前段、四八条二項

一  執行猶予 被告人田中八郎につき刑法二五条一項

(裁判官 森眞樹)

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